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アプリnovelnove交流による企画。

春お題小説 K

一品目

#けーのめしてろ ”Fry” day
とある金曜日。午後5時。
一日の業務の終了を告げるブザーがけたたましく鳴る。
あー、やっと一週間が終わった。
俺はデスクワークで凝り固まった体をほぐすように大きく伸びをした。
金曜日は定時退社日なので、残業をせずさっさと帰らなくてはならない。
他の社員へ挨拶もそこそこに会社を後にする。
そして脳内では緊急会議が開かれた。議題は今日の晩飯だ。様々な意見が飛び交う中、特に多かったのが『唐揚げ』だった。理由は金曜日(フライデー)だから、という至極下らないものだったが最近作ってない事を考えて採用した。ここまでわずか10分。普段会社で行うミーティングもこれくらいだったらどんなに良い事か。
などと考えているうちにスーパーに到着した。
スマホに残しておいたメモを見ながら、買い物かごに商品を入れていく。
鶏もも肉、生姜のすりおろしのチューブ、濃口醤油、サラダ油…他の調味料は確かまだ残っていたはずだから、こんなもんでいいだろう。支払いを終え、自宅へと向かう。
帰宅すると、スーツの下に着ていたワイシャツが少し汗ばんでいるのを感じた。最近、暑くなってきたから無理もない。とりあえずスーツとワイシャツを脱ぎ、上は半袖の白いTシャツ、下は半ズボンというラフな格好になって材料を仕込むことにした。
まずは、鶏もも肉を一口大に切り、袋に入れる。そこに、酒大さじ2、濃口醤油大さじ1と半分、おろし生姜とおろし大蒜をそれぞれ3cmほど入れよく揉み込む。あとは、これを冷蔵庫で30分ほど寝かして味を染み込ませるだけで準備完了。
シャワーをさっさと浴びて、料理を再開。鶏肉を放置している間に味噌汁と副菜の冷奴でも作ろうかな。味噌汁は、水と顆粒出汁、刻んだ葱とわかめを鍋に入れて煮立たせ、沸騰したら火を止め味噌を溶かす。うーん、良い匂い。日本人に生まれてきた事に改めて感謝する。
冷奴は輪切りにした胡瓜と塩昆布を載せてから一旦冷蔵庫に入れておく。
おもむろに時間を確認する。既に30分経過していたようだ。鶏肉が入った袋を取り出し、片栗粉を袋に入れ全体に塗していく。180度の油が入った鍋に鶏肉を入れるとじゅわあぁぁ、という音が狭いキッチン一帯に響き渡る。この音だけで茶碗一杯はイケる。頃合いを見計らって鍋から取り出し、お皿に盛り付ける。付け合せの千切りキャベツとトマトを添えて完成。それにしても、文句無しの揚がり具合。あぁもう早く食べたい!逸る気持ちを抑えつつ、テーブルに料理を並べていく。
並べ終えたら、早速食べる。まずは唐揚げである。改めて見ると良い具合に揚がっている。
一口齧ると、サクッとクリスピーな食感が口の中で響いた、と思ったら鶏肉の旨味と大蒜と生姜の仄かな香りが広がっていく。しっかり咀嚼した後に嚥下すると、一日中しっかり働いて疲れた体に幸せが染み渡っていく。もう一口唐揚げを食べ、そしてそこに白米を放り込む。最早『美味しい』以外に言葉が見当たらない。
一通り唐揚げを食べたら味噌汁で口の中を落ち着かせ、副菜の冷奴を食べる。ごま油を掛けてから一口頬張ると、胡瓜のシャキシャキ感と塩昆布の塩気がごま油の香ばしさと一体となってこれもまた美味しい。青じそドレッシングを掛けても良かったかもしれない。
そして、気が付けばあっという間に完食していた。手を合わせて『ご馳走様でした』をする。
また作りたいなぁと思いつつ、心地良い満腹感と幸福感にしばらく浸るのであった

 

二品目

#けーのめしてろ La pizza è uno stuzzichini.
とある昼下がり。
生地を捏ねていた。薄力粉、砂糖、塩、ドライイーストを混ぜた粉類に水を少しづつ足しながらまとめていくと、段々粘り気を持った一つの塊になっていくのが分かる。生地を捏ね終えたら30分程常温で発酵させる。その間に具材の準備。今回は玉ねぎ、ピーマン、あとはベーコンとミニトマトにしようかな。玉ねぎは薄くスライスして、ピーマンは種を取り出して輪切り。ベーコンとミニトマトはそれぞれ4等分にしておく。
さて、材料の準備は終わったから…今日飲むお酒を決めるとしよう。おもむろに冷蔵庫の扉を開く。食材たちが所狭しとひしめき合っている中にレモンにオレンジ、葡萄や桃の缶チューハイ、炭酸水で割るタイプの梅酒が収納されている。でも、今日はこいつらの気分じゃないんだよなぁ…。冷蔵庫の扉をぱたりと閉めて、背後にある大きな収納棚を確認する。ここにも数は少ないながらもお酒を仕舞ってある。しばらく棚の中を探していると、お目当てのボトルを見つけた。チョコレートリキュールである。これをコーヒーと牛乳で割って飲むとしよう、これでお酒の準備も完了。
時間を確認すると、なんだかんだで既に30分が経過していた。発酵が終わった生地をボウルから取り出し、生地と綿棒同士がくっつかないように小麦粉をまとわせ生地を薄く延ばす。
そこにピザソースを満遍なく塗りたくり、具材を載せる。あとは200度のオーブンで15分ほど焼けば完成。オーブンの扉を開けると、香ばしい良い匂いが飛び込んでくる。
早速食べるとしよう。食べやすいように切り分けてから口に運ぶと、もちっとした食感のあとにピザソースの仄かな酸味と野菜の甘み、ベーコンの塩気とチーズのコクが一体となっているのが分かる。すごく美味しい。そして、これをカクテルで流し込む。カクテルは、チョコレートリキュールをベースにコーヒーと牛乳で割ったものである。甘さとほろ苦さが口の中をリセットしてくれる。
休日の昼下がりはこうでなくては。
自作のピザを半分以上平らげ、2杯目のカクテルをグラスに注ぎながらそう思うのであった