noveで企画

アプリnovelnove交流による企画。

1対1サシリレー小説 供養1

完成に至らなかったものの、供養としてまとめます。

タイマンで行うリレー小説。大まかなルールはゲスト側に選んでもらいました。

各個人によって選ばれるルール色々なのは面白かったです。

秋口に行いました。novelnoveの九人で行うリレー小説はたくさんしましたが、サシでやるのあまりやったことないなーと。

完結した方と完結しなかった人で雑感半々。尚完結した人のものは以前の記事に載せてあります。同時期に複数こなすという経験は初めてで、割と大変でした。

お付き合いありがとうございました。

 

紬歌さん

青×紬

ルール

・お題あり/200文字/1パラは紬歌

 

1パラお題「夏の終わり」担当紬歌

庭中に響くツクツクボウシの声。カランと溶ける氷の音。ノートの上を走るシャーペンの音。色んな音が混ざる。
高校生最後の夏。17歳の夏。いろんな言い方はできるけど、見た目はいつもと変わらない夏が終わろうとしている。
夏休み最後の日、私の前には赤本が広がっていた。日本史。春に受けた模試では、あまり点数が取れなかった科目だ。

 

2パラお題「スマホ」担当aoto

覚えることばかりで歴史は昔から苦手だった。歴史なんて覚えていなくても、スマホで調べたらいいなんて風に思ってしまう。17歳、豊臣秀吉の側室となる茶々は激動の人生を送っていた。幼い頃に戦で父を亡くし、17歳で義父と母を亡くす。彼女の17歳の夏にはどんな音が聞こえていたのだろう。歴史には不幸が集まっている。考えるだけで嫌になる。微睡みを割って入ってきたのはLINEの通知音。

 

3パラお題「花火」担当紬歌
勉強をするときは通知を切りなさい、という担任の言葉を思い出しながら、LINEを開いた。ほんの少し気になっている男子からのメッセージだといいのに。そんな淡い期待は簡単に裏切られて、クラスのグループLINEに新着メッセージを知らせるマークがある。落胆を隠せないまま覗いたトークルームには、短い言葉が届いていた。
『みんなで花火しようぜ!』
そういえば今年は花火大会にも行っていなかった。

 

4パラお題「イヤリング」担当aoto
花火をみないと夏を過ごした気にならない。
線香花火やみんなでやる花火も楽しいけれど、打ち上げ花火が好きだ。
体を揺さぶる音の響きがいい。さすがに大砲はいやだけれど。
『いいね、行きたい!』
すぐに反応してしまう手をしばし留めて、クローゼットを開いてみる。最近購入したイヤリングに合いそうな服を着ていけたら素敵だな。
せっかく最後の夏だもの。

彼も参加するのならいいのにな。チラッとLINEを伺うけど彼の姿はまだなささうだ。

 

5パラお題「幽霊」担当紬歌
もうLINEのことは気にせず赤本の続きを解こうと思うのに、どうしても気になってチラチラと覗いてしまう。何度目かのチラ見で、ようやく新着メッセージの通知がきた。彼だ。
『俺はパス』
その短い言葉が何度も脳内を往復する。俺はパス俺はパス……行事には真っ先に参加するような彼が、来ないだって? どうしよう。彼が来ないのなら、私も行くのをやめようかな。迷ったけれど、高校最後の夏がこのまま終わってしまうのは惜しくてならなかった。
一度深呼吸をしてから、彼とのトークルームを開く。内容はシンプルに。
『花火、行かないの?』
送信ボタンを押した指先は緊張で震え、幽霊にだって負けないくらい冷たくなっていた。

 

6パラお題「クッション」担当aoto
ベッドの上のクッションを手にとって、顔を押しつける。返信なんて来ないかも知れない、なんだこいつとか思われたかもしれない。だって、ついさっきパスって言ったばかりなのに、こんなの。通知のバイブが鳴る。『そうだよ。勉強に集中しようと思ってさ』
彼が目指している大学のことを思い浮かべる。一緒のところにいける自信はない。彼は私よりもずっと頭がいいのだから。やっぱり、迷惑だよね。でも、卒業してしまったら、きっと今以上に繋がりは薄くなってしまう。

 

7パラお題「距離」担当紬歌

今すぐ彼に会えたらいいのに、と思う。住むところも能力もクラスでの地位も、全く違う。私と彼との間には埋められない“距離”が横たわっている。
そんな私が、彼と仲良くなるチャンスは、この花火が最後かもしれない。彼に近づきたい。なら誘うしかないじゃない。無い頭を振り絞って、送信する内容を考える。
『卒業式までにクラスでワイワイするのはこれが最後じゃない。これから勉強に集中するためにも最後にはしゃいじゃおうよ。一緒に行かない?』
祈るような気持ちで返信が来るのを待ち、三分後、ようやく既読がついた。なかなかテンポ良く進まないやり取りがもどかしい。

 

8パラお題「ワンピース」担当aoto
『なかなか積極的になれないから、懲りずに誘ってくれて嬉しい。じゃあ、いこうかな』
返信が届いたときには舞い上がった。よかった、彼が来てくれることになった。クローゼットの扉を開けて、持っている服を確認する。お気に入りのイヤリングにあわせるワンピース。これも初下ろし。大丈夫かな、似合っているかな。続けて届いた文面に目を見開いてしまった。『でも、あっちではパスって言っちゃったんだよな。ねえ、二人で行くのはダメかな』

 

9パラお題わたわた未完結

 

 

シケ崎さん

青×崎

ルール・200文字/9パラ/1パラシケ崎

 

1パラシケ崎

「空の上では、生きたくないねぇ」

 おじさんは、木枯らしみたいな声でそう言った。蝉時雨がジャワジャワ空気をかき回す夏の庭で、おじさんだけは、いくつか遅れた季節の中に生きているように思えた。

「なんで?」

 空にお家があったらきっと楽しいのに。毎日青空を飛んで、雨や雲とお友達になれたら。ああ、でも。頬を汗が伝う。

「暑いのは、やだけど」

 麦わら帽子の下で、木漏れ日の色をした瞳が笑った。

 

 

2パラaoto

「実はおじさんは空の上で暮らしたことがあるんだ。だからこりごりなのさ」

嘘だ、わたしはおじさんに言ったけど、ゆったりとした口調でそのときのことを語ってくれた。

「空は地上より、天候や気温というものの影響を受ける。さっき君が言ったように、太陽が側にいて暑いし、風もびゅうびゅう吹いて寒い」

「何事にもいいところと、悪いところがあるのね」

おじさんはちょっとがっかりした私の頭を撫でてくれた。きっと、こんなことを言うと、両親なら私をバカにするのに。